眠眠カフェイン

横になって読みたい寝言

眠眠カフェイン

怪奇!マンショントラウマ体験

今の住居に引っ越して間もないころ、宅配便を待っていたときの話です。

結構な必需品(家電)なので早く来て欲しかったのですが、特に連絡なく到着が遅れていたのでイライラ&そわそわ。気分転換に溜まっていたゴミを出すことにしました。

もしもその間にオートロックのインターホンを鳴らされても妻が対応してくれるし、ゴミ出しスペースは1階なので、業者が来たら大体気づけます。

 

すると案の定、ゴミを捨てている戻る最中に作業服姿の男性を見つけました。入り口ドアの向こうで大きな段ボールを抱えて立ち、なんとかインターホンを押そうとしています。

僕はすぐに内側からドアを開けると、そのままエレベーター前へ移動し、ボタンを押して待機。エレベーターが到着してドアが開くと、男性は軽く会釈をしながら先に中へ入りました。両手ふさがってるんだから奥に行けばいいのに、素早く階数ボタンの前に陣取り、後から乗り込んだ僕に「何階ですか?」と聞いてきます。

その立ち振る舞いたるや実にスマート。やっぱりプロは身体に染みついてるんですかね。

 

「6階です」と僕は答え、続けて「僕が持ちますよ」と声を掛けました。男性はにっこりと柔和な笑みを浮かべて、「ありがとうございます、大丈夫です」との返事。

よく考えたらそこで受け取っちゃえばよかったんですけど、親切心が変な形で働いてしまいました。

まもなく6階のドアが開きます。

僕の部屋はエレベーターを降りてすぐ右前にあるので、男性は一直線にそちらへ向かってインターホンを鳴らしました。僕は「出るときはボタンを押して待ってくれるわけじゃないんだな…」と若干の違和感を覚えつつ、小走りで男性のもとへ。再度、「もう僕が持ちますから」と申し出ました。

男性はそこでもなお「いえいえ大丈夫ですよ」との返事。いやどこで頑固発動しとんねん!と呆れながら、開いた玄関に2人で入っていくと…

 

なぜか見知らぬ女性が立っていました。

そこは6階ではなく、5階だったのです。



 

どこでボタンを掛け違えたのか。いや押し間違えたのか?人間の思い込みがすべて悪い方向につながった、まさに怪奇!な事件でした。

タイミング。段ボール。インターホン。作業服…みたいな服。男性の柔らかくテキパキした対応。僕は一見して彼を業者だと思い込んでしまったのですが、実際はただの引っ越したて夫婦の旦那だったのです。マンションは全階同じレイアウトで、ぴったり真下だったのも悪かった。

夫婦間で、カギ開けられないかもしれないからインターホン押すよとか決めてたのかな!知らんけど!

 

男性と2人で6階、と思っていた5階に到着したとき、階段表示盤には確かに「6」だけが灯っていた。思えばそれがトドメでした。それまで99%で信じ込んでいた男性宅配業者説が、100%完全体になったのです。
ふたを開ければ、単にそのエレベーターが「到着した瞬間に到着階のボタン表示も消灯する」という仕様だっただけなのですが、僕も引っ越して間もなかったのためにちゃんと認識できておらず。

男性のもった段ボールで隠れていた裏側では、ちゃんと「5」「6」のボタンが灯っていたのでしょう。

 

家に上がり込んだ瞬間の夫婦は、僕のことを不審者扱いせず、なぜかニコニコ状態でフリーズしてしまいました。僕はまだ事態が呑み込めていないものの、ここに自分がいるのは絶対違う!と一瞬先に気づき、「失礼しました!」とだけいって逃走。5階から6階に昇る短い間になんだなんだなんだなんだと思考の空振りを繰り返しました。

正直、その時は恥ずかしさでいっぱいだったので「いや男も自分の荷物だったらはっきり言えよ!家入られたら怖いだろ!」と半ば逆切れしていたところもありました。でも後から考えると仕方なかったのかもしれません。

 

だって男性サイドから見た僕は
「引っ越してきたら段ボールを持とうと現れ、親切心が強いあまり自宅じゃない階で急遽エレベーターを降り、さらには家のドアが開くわずかな間すら荷物をもとうとし、あきらめず家の中まで入ってきた」
という優しきモンスターです。

旦那は無碍にもできず、奥様は何が起こったのか分からず笑うしかなかったのでしょう。まだ引っ越したてで、家に入られた!という感覚も薄かったでしょうし。

 

あれ以来一度も会っていませんが、今でも僕の真下にはあの夫婦にはいるかもしれない。
そう思うと今でも、恥じいぃいぃぃぃ!と言いながら転がりたくなります。

足音なんて万が一にも立てられません。
推し格闘家が大逆転で勝った時も、竹脇まりな先生のYoutube動画を見ながら室内トレをする時も。決して飛び跳ねることなく終始すり足で過ごすマンションDAYSとなっております。