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さらば青春!社会人デビュー前夜を振り返る

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巷では”新社会人応援!”なんて言葉が飛び交うシーズンですね。
僕が新卒で入った会社はいま思えばなかなかパンチがきいてまして、苦い経験もしてますので、個人的には心の底から応援したい気持ちでいっぱいです。

僕の場合、社会人になるまえには3週間の「研修合宿」がありました。甘っちょろい学生から世の中に出荷されるベルトコンベアーみたいな時間。今回はそのビター&スウィートなひとときを書き残してみます。

会社概要

関西本社の製造業。幹部クラスはだいたいラグビー部で、太ってて声がでかいです。
そんな中、社長はひときわ異彩を放つスリムな体型。たまにお付きを連れて会社に現れては、マオカラーでゆったりと手を振ってました。まるでどこかの総書記のようです。当然のように奥さんも息子も偉い人。

 

寝泊りする場所は山奥

関東に配属されるメンバーは、男女総勢約50名。人里離れたロッジみたいなところで寝泊まりするという、バトルロワイヤル+かまいたちの夜みたいな生活でした。男女は当然別棟ですが、テレビのある休憩スペースは共用なので話はできます。
毎朝、用意されたバスに乗って街中へ移動して、でっかい自社ビルへと移送される毎日。大事にされてるといえばされてるし、逃げ出さないように管理されているようでもありました。

僕は営業職だったので喫煙組が多く、研修期間すべてを韓国映画さながらの半地下で過ごすことになりました。

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昭和生まれの常識「新人はエレベーター禁止」

本社に入ると、ヤクザの事務所と見まごう大きな筆文字がお出迎え。何が書いてあったかは覚えてませんが、「欲しがりません勝つまでは」みたいな意味でしょうきっと。

広々としたエントランスはブルーとホワイトの交差点。靴箱のあたりでは、併設された工場から流れてきた構成員たちが「ウィッス」みたいに野太い声をかけてきました。小指くらい無い人もいたし、本格的にまぎらわしかったです。

研修会場は10階くらいにあったのですが、当然、日本男子が文明の機器なんて使わせてもらえるわけがありません。部屋ばきの足ベータ―で非常階段をのぼっていきます。初日こそ息が切れて退職を決意しましたが、毎日の喫煙(喫煙所は1階のにある)ですっかり足腰が鍛えられていきました。
水曜日のダウンタウンで「愛煙家 喫煙所までの道のりがどんなに困難でも向かっちゃう説」ってありましたが、あれはホントです。

 

朝礼はシャウト、説教もシャウト

「ひとーつ!」
屋上(テポドン撃つとこ)に並んで叫びました。きっと皆さんも経験があると思いますが、朝から声出すって意外に気持ちいいですよね。

とはいえ数日たって喉が枯れ始めると、自分でもなぜこんな会社に入ったのかと痛烈な後悔に襲われます。バンドでも潰したことないのに……。ただ最初の会社だし、同期がいいヤツばっかりだったので夜逃げは耐えました。

後、何かの手違いで僕だけ入社書類が足りなかったらしく、どこかからやってきた高橋克典似の総務特命係長に首筋を引っ張りまわされました。ゼロ距離で「言われたことはやれ!」と言われ、胸の中で社会人としての自覚が急成長。

 

同期は癒し

日中を殺伐とした環境で過ごしている分、仲間に恵まれたのはありがたかったですね。僕は浪人してた分年長者だったんですが、「〇〇さんスゲー!何でも知ってますね!」みたいに持ち上げられたりして。反面、平気でプロレス技をかけてきてくれたり、本当に良い距離感でした。せっかくなのでみんなで京都まで出てイカガワシイ店にも言ったんだけど、僕だけ出てきた子に「あたし先月池袋からきたんだー」と言われてガッカリ。はんなりであれ!

そんな風に楽しむ一方、人間、研修とはいえ社会に触れていくと成長するもので、
「念のため明日○○持って行った方がいいんじゃないすか?」みたいに、周りと確認し合うような動きが生まれます。集団生活おそるべし。

僕が特に気が合ったのはT君という子です。サブカル好きで、お互いロックを気取りたいのに、早起きして書きものしちゃうような共通点がありました。彼とはのちにバンドも組んだし、ホント良い出会いでしたね。

 

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俺氏、余興で歌う

いよいよ研修も大詰め。最後の週には、チーム別に芸を披露するという余計なイベントがありました。社長はマオカラー着てるだけあって出し物が大好き。わざわざホテルに本社の全従業員を集めて、何百人の前でやらせるのです。

幸か不幸か、僕はT君と同じ班に。普通に組体操でもしとけばいいのに、お互いの変なプライドが炸裂たせいで、前衛芸術みたいなシュールなコントができあがってしまいました。中でも僕の役は、パントマイムをしながらひたすら平井堅の『瞳を閉じて』を歌うホストというもの(ボタン3つくらい外してた)。不思議なもので観客が多すぎると見られている実感がなく、まったく緊張しませんでした。

僕の歌はなぜか男子だけに大好評。出し物終わりには面識のないはずの中部・関西組のメンバーも「抱いてくれ」とハグしてくれました。特に名古屋支店に配属が決まったガキ大将からは、熱烈キスをプレゼント。

 

こっそりカッポー誕生

人間、閉鎖された環境に押し込まれるといろいろあるもので。何度か男女で飲んだりもしました。聞くところによると、のちに3組くらいカップルが誕生したらしいです。

かくいう僕も、研修打ち上げ後の立食パーティーで気の合う茶ギャルに声かけて楽しく喋りました。研修が進むにつれみるみる肌が荒れはじめ、陰で男子から”アーモンドクラッシュポキ子”とあだ名をつけられた子です。リテラシーがなくて本当にすみません。

ポ「ジャンケンで負けた方がケーキ持ってくることにしない?」
俺「いいよ。あ、俺の負けだ」
ポ「じゃあおねがーい」
~3分後~
俺「……どうせだからコーヒーも持ってきたわ」
ポ「お、アンタ人に興味なさそうなのに気使うんだ」


みたいな会話のあと、ツィーンと乾杯。
と!なぜかそのタイミングで総書記が近づいてきたので、慌ててカップを置いてお酌をすることに。ポキ子はカップリングパーティーのサクラ経験者だったので、さすがの対応力を見せてくれました。

その後少し冷めたコーヒーを二人で飲んだ時、ふとつぶやいたポキ子の一言が忘れられません。

「あたし、たったいま社会に出た感じしたわ」

ギャルはギャルで、外に見えない葛藤を抱えていたのかもしれません。配属されて仕事に慣れると肌は癒えていき、普通のポッキーに戻っていったし。

 

締めくくりはハプニング

 

最終日はやっとシャバに戻れる喜びから、僕は思わず首跳ね起き↑↑↑で起床してしまいました。

…が!

勢いをつけすぎたせいでベッドの長さが足りず、前転して扉に突っ込み、しかも鍵が開いていたというとんでもない状況に!

向かいの部屋のメンバーはもちろん、手洗い場にいた誰もが2度見するような大ハプニング。
ちょうどその場に居合わせたポキ子からは、
「そんなに早く動けたの!?」
と謎の感想をいただきました。僕はいつもダラダラして、人や女に興味がないように見えるらしかったです。


その後、荷物をまとめ、いよいよ同期ともお別れの時。西日本組、工場勤務組とも一緒に写真を撮りました。「歌つづけてな」とシンガーみたいな励ましをかけられて、そっちこそ「指飛ばすなよ!」と返答。

こうして、全国に新たな製造業キッズが誕生したのでした――。


***
ということで、社会人デビュー前夜のお話でした。
遅刻したり、居眠りしたり、学生気分は完全に抜けませんでしたが……。ドライな男子校で中学高校を過ごした僕にとって、はじめて「共学感」のある青春のひとときでした。
晴れて横浜支店に配属されてからははたかれたり蹴られたりいろいろあるのですが、それはまた別のお話。


ちなみにポキ子は他の投稿(クリスマス空振り事件)で紹介したヒロインです。
したがって、いまは国交断絶中です。
風のうわさでは、マルチ商法の化粧品を同期に売りつけたとかなんとか。
仕事が肌に合わなくて、つぶつぶいちごポッキーみたいになっていないといいな。