眠眠カフェイン

横になって読みたい寝言

眠眠カフェイン

この人には一目置かれたい、という気持ち

お前って凡?非凡?
そう聞かれたら迷わず「ボンだよ、ボン、ボン」と答える私ですが、ごくたまに気を張りたくなるときもあります。

この人には認めてもらいたいな。
オーラか何かしりませんが、定期的にそういった人と出会うんですよね。

今日はその辺の記憶のトビラを、3つ+α開けてみようと思います。
せっかくなのでちょっとした学びも添えて。

 

 

パターン1. 負けたくない(同期のライバル・N君)

1人目は新卒時代のお話。同期だったN君は劇団ひとり似のサブカルボーイで、1つ年下の男の子でした(僕は浪人してるので)。

同じ営業職としての入社だったのでおのずとピリピリ感はありました。想像するに、お笑い養成所の仲間に似た距離感というか。最初に意識してきたのは向こうで、きっかけもハッキリとあります。

それは同期50人が初めて顔を合わせる新人研修時、大会議室で先輩社員相手に商談のロールプレイをした時のことでした。当時怖いもの知らずだった僕は、「どうぞお掛けください」と取引先側を演じるシュールなボケをかまし、一同をざわつかせることとなったのです。

どうやらそんな無謀勇敢さがN君の琴線に触れたようで、その日の帰り道にいきなり
「オレ、ネムヒコ君のライバルになるって決めた!」
とジャンプ漫画みたいな宣言をしてきたのです。そんな熱いやつに出会ったのは生まれて初めてだったので、嬉しいやら恥ずかしいやら。もっとも僕は期待に応えられず、わずか1年半でドロップアウトしちゃうんですけど。

そんなライバルも職場を離れれば同じ音楽好き。最近の邦楽バンドをマシンガン紹介してくる彼に、こっちなカウンターを合わせるのがお決まりのやりとり。僕は基本オタ気質じゃないので内心「何言ってんだかわかんねえ…」状態でしたが、好きなものを夢中でまくしたてるN君には自分にない魅力を強く感じていました。

ふたりともロックな自分を気取りたいけど、しっかり教育された地が出てしまうところが似ていたように思います。たとえば同期みんなで旅行に行ったときも、自分の時間が欲しいあまり2人だけ早起きしてロビーで書きものしちゃったりして。一緒に夏フェス行ったり、バンドやったり。短かったけど楽しい間柄でした。

学び:たまには思い切ったボケも良い出会いを生む

 

パターン2. なめられたくない(ボケたがり関西人・Y君)

2人目は出版社時代の話です。僕にとってはニート明けの社会復帰。30歳を超えているのに精神年齢が追いついておらず、なにかとアンバランスな時期でした。

Y君とは社員旅行で初めて出会いました。彼を含む大阪本社のメンバーと、僕たち東京支社のメンバーが一緒に沖縄に行った時のことです。
初めて会った時のインパクトは一生忘れません。元総合格闘家のデザイナーという変わり種で、185cm90kg、スキンヘッド、タンクトップに軽いTATOO。顔は一般的な凶悪犯罪者をイメージしてもらえれば大丈夫です。まだ20歳そこそこの癖に、懲役15年こなしてきたみたいな貫禄がありました。

 

僕たちは年の差こそあれ社歴が近かったので、買い出しなど雑用を共にする機会が数多くありました。そのあいだの彼の行動というのが…もう…典型的なイキリ関西人で。

「うわオレのほうが1ヵ月先輩やん!今日はどうもてなしてくれんの?」
とか、

「今日ネムヒコさん打ち上げで司会やるんですよね。えっ何すか? もしかしてビビっちゃってるんすか? ●●さんこの人ビビってるわ!(先輩社員を呼ぶ)」
とか。

当たり屋みたいに、身を割り込ませてイジリ代をつくるやりくちがとにかく不快で、僕主導権を渡すまいと妙に対抗してしまいました。たとえばお笑いの話題なら、当時の関東人ならおよそ知らないコアな漫才師の名前を出してみたり。ただ、それはそれで相手のフィールドに飛び込むようなものなので、口数の分だけストレスがたまる結果に。

しまいには相手が元格闘家ということを忘れて、普通に口論してしまいました。

 

「こっちが文句言わず司会を受けたのに、そんなにガチャガチャ言うならお前がやれよ!喜んで降りるから!」と大声で迫る僕。

その時は、さすかに大阪本社のお偉いさんが慌てて飛んできて止められましたけど。たぶん僕が殺されないようにでしょうね。

口に合わない相手はいくら煮詰めても美味しすならないってことでしょう。こっちだって慣れない社会に溶け込もうと頑張ってるんだよ!と被害者面していた時期に起きた、きわめて不毛な事件でした。

学び:輩センサーが働いたら相手にせず逃げるべし

 

パターン3. 認められたい(大物アートディレクター・D氏)

僕がライターとして師事した方です。誰もが知ってる商品、おなじみのキャッチコピーで国内外の賞をバカバカ獲っていた方なので、はじめて一緒に仕事したころは肩の力がガッチガチに入ったのを覚えています。

40手前なのにキャップを被って、うぃーっすと事務所にセグウェイでやってくる。1時間くらい適当にコーヒー飲んで過ごす。傍目にはほとんど寝てただろって感じなのに、帰り際には30個くらい仕事のダメ出しをしてくる超人的な才覚を持った人でした。

 

前に紹介した若者2人はどちらかというと饒舌でアピールに優れているタイプで、焦燥感を駆り立てられた感じ。一方でD氏には、ビジネス上の観点で認められたいという気持ちが働きました。やっぱり一流の人に面白いと言われたら嬉しいじゃないですか。

ただ結局、最後まで芯を食うことはなかったです。D氏は基本愛想笑いをするようなタイプではなく、ちょっとやそっとのエピソードトークをではイロモネアの最後の客くらい笑わない。流行りのアプリでじゃれてるほうがまだ反応してくれました。僕のことは「人間として魅力的」というより、「雑学に通じてて器用な子」とだけ見てたんじゃないかな。

全然後者でいいはずなのに、当時は前者を目指していた。冷静に振り返ると、僕も無意味なことをしてたものです。
定食屋が帝国ホテルに味をほめてもらいたがっているというか。モデルやタレントさんのような”メディア負けしない素材”を扱うプロに、肌のきれいさでアピールしていたというか。

僕みたいなセミプロは、むしろ庶民感覚からくる疑問を素直にぶつけていればよかった。プロの土俵に上がろうとして、自分の持ち味を殺してしまった反省があります。

学び:高い場所には無理に登らず、馬鹿みたいな声で呼べ

 

パターンα. 好かれたい(人気者の方々全般)

最後は、つい最近捨ててしまおうと決意した気持ちです。
職場などで、「自分はそこまで魅力的に感じないけれど世間一般の人気は高い」人に出会ったとき、これまではなにか爪痕を残そうとしてました。

理由はシンプルに得だから。数千フォロワーいるアカウントなら相互フォローしておきたいな、っていうストレートな打算ですね。営業時代の悪癖でそういう社内営業も大事かなと思ってやってたけど…もう、そういうのは卒業でいいです。

人気者には情報が集まるから一見得なようで、悪い噂を流されて炎上するリスクのほうが怖い。チヤホヤされてきたやつはチヤホヤされないと文句言うんですよ。

学び:頼むから政治要素ゼロで仕事させて

 

***

自分と相手は違うんだから、相手の魅力はリスペクトして学べばいい。無理に対抗する必要はないし、認められなくても構わない。
このシンプルな境地に達するまで、僕も多くの年月がかかりました。

特に仕事に関して、僕はもう取ってつけたアピールをする気はありません。よっぽどの大企業じゃなければ、別にアピールされなくても降りたい仕事は腐るほどあるもので。目の前の本業をしっかりやって、人並みにコミュニケーションをっていれば、勝手に「キミこれできない?」って話はやってきます。嫌でも来る。

そんなこんなで、背伸びして虚像を愛してもらおうとするのはやめました。