槇原敬之さんの『もう恋なんてしない』って曲がありまして。
曲も歌詞も、本人出演のMVも、センセーショナルに音楽シーンを駆け抜けました。
しかしあれが30年前だなんて。
聴いたことないっていう若い世代にはぜひ聴いてほしい一曲です。
で、僕はあの曲の歌詞についてずっと引っかかってます。
A. 「もう恋なんてしない」なんて言わない
B. もう「恋なんてしない」なんて言わない
日本語的にはどっちも正しいんですけど、でも、どっちなんだっていう。
ちなみに全部の歌詞はこんな感じ。
JASRACに撃たれるのが怖いので歌詞引用なしで要約すると、
「君に別れを告げられて寂しい。僕だって朝食は作れるし、歯ブラシだって全然捨てちゃう。でも、そんな風に強がると余計に君の存在を感じるよ。僕も強く生きていこう。だからアレは絶対、言わないんだから――」
こんなとこでしょう。最後クマムシみたいになりましたけど。
A. 「もう恋なんてしない」なんて言わないが本命でしょう。
①恋をダメなものみたいに言って、君との思い出を否定したくないから
②別れて弱音を吐くような自分になったら、君に申し訳ないから
③ふられてクヨクヨしてるなんて悔しいから
といろんなニュアンスを内包していそう。ただ曲が売れた当時クソガキだった僕は、ただただ③だと思ってました。見れば見るほど深い歌詞です。
問題のB. もう「恋なんてしない」なんて言わないの方。
Aとそんな変わらなくない?と思われるかもしれませんが、現在進行形でつき合ってる時に当該の台詞を言ってたかどうかが違います。
「つき合うってツマンネ。あーあ、恋なんてするんじゃなかった!」(愚痴)
「君と別れたら恋なんてしない! できない!」(メンヘラ宣言)
みたいに。さー今日もですね恋なんてしないなんて言うとりますけどもー、と口癖レベルで言っていたとしたら。
その場合、「ゴメンもう『恋なんてしない』なんて言わないから!」という、”弁解”の新解釈が生まれます。相手は相手で「でもアンタそう言って何度も『恋なんてしない』って言うじゃん!」と返すような渋谷っぽい景色が想像できる。
「恋なんて~」は言わないけど別の台詞なら言うよ、というダメ男加減もただよってきたりして。まあマッキーも色々あった人ですから、こんな風に倒錯した時期があってもあながちおかしくはないでしょう。
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正直、僕も正答はAだろうなとは分かってます。
”もう恋なんてしない”はそのまんまタイトルになってるわけで、Bだとしたら切り抜き方がシュールすぎる。
ただ、絶対じゃないよなという点で引っかかっている。深く考えずサビだけ聴いていたら、Bで認識する人もいるんじゃないかと。日本語もヤヤコシイ言語ですし、必ずAが正しいだなんて言えないよ絶対、と妙に固執して今に至っています。
それにしても、「恋」の音楽も変化してきてますね。
僕のひとつ前の世代と言えば松山千春の『恋』が有名で、重いにもほどがある女性目線の歌。淡いもの、儚いもの。そんなニュアンスが色濃く感じられます。
一方で後の世代はというと。疾走感あふれるモンパチの『小さな恋のうた』などいろいろあって、しばらくはLOVEの時代が続き、2016年に星野源の『恋』が旋風を巻き起こしました。なんといっても令和すれすれですから、男女2人で臆面もなく踊っちゃうくらいPOP。イントロで「コーイココココココーイ、ココココココーイ、ココココココーイ♪」と口ずさんでも叱られないくらいです。
槇原さんの曲が出たのは平成という新時代の初期。男性が”強がり”という類の弱さを見せる点で、世間には新鮮に映ったかもしれません。さすがに源さんのヤツほどはっちゃけられませんが、やるとしたら「恋、恋、恋、こここ、恋、こーい」とせめてひらがな&漢字にしてもらいたいものです。
あと恋と関係ないけど、同じ別れの曲で気になっているのが、Mr.childrenの『over』。
「顔のわりに小さな胸」って歌詞があるんですけど、これってかなり珍しいなと思っていて。大きな胸、ならまだ分かるんですけどね。
見るからに巨乳顔ってこと?
顔がでかいってこと?
新たなミステリーの予感がします。