子供のころからピースサインをほとんどやったことがない。
理由はシンプルで、なんか恥ずかしいからだ。別に他人がやっている分には何とも思わないのだけれど、自分でやるのはほぼ無意識で避けていた。
幼稚園に入るまでは、両掌を合わせたお願いのポーズをほっぺたに当てるという謎モーションで切り抜けた。その頃の記憶はあまりないので、本能的にはこれが僕のベーシックな写真用ポーズになるのかもしれない。
幼稚園時代はヒーローのポーズ。小学校は棒立ちだったと思う(林間学校とかほぼ盗撮だったし)。で、プロレスを覚えた中学高校はファイティングポーズになり、大学以降はではメロイックサインを多用するようになった。
メロイックサインはこれね(向かって左の子っぽくやることが多い)
あれ、そういや俺ピースサインしないなと発見したのは社会人になってから。会社の周年記念パーティーで集合写真を撮った時だ。みんながみんな判を押したようにピースサイン+笑顔で映るなか、僕一人だけが鬼の形相で舌を出して指をおったてている。いや、指2本をおったてているのは他と同じなのだが、あげている指が違うのだ。
たまーに上司からお前は生意気だと言われることがあったけれど、その一端が分かったような気がした。さすがにめでたい席であれは社会性がなさすぎた。
しかし、なんで恥ずかしいのかを言語化するのかは難しい。世の中の平和はバチコリ願っているし、「ネムヒコ君ォークボールの握りってどうやるの?」と言われたら人さし指を中指をあげてポーズをとるのはやぶさかではない。もちろん、ギリシャじゃ犯罪者への投石を意味するからNGなんだよな…と遠慮しているわけでもない。(その場合メロイックサインもダメ)
ということは、もう考えられるのはふたつ。
A. ピースサインが王道過ぎてひねりたくなる
B. ピースサインが自分に似合わないと思っている
のどちらかだ。
あらためて自分の胸に問うてみると、ABどちらもあるような気がする。
言語化するなら、「ピースサインは素直な人がやるもの」という考えがあるというか。中学の頃にはロックとプロレスの反骨精神にまみれていたし、自分みたいな斜に構えた人間がピースサインなんていただけないと固辞していたいのかも。
そんな歴史を自覚してしまったいま、今後どうしようかを大いに迷っている。間違っても指ハートはできないし、メロイックも厳しい。ジョジョにしようかしゅうぺいにしようかゴイゴイスーにしようか…いまだ正解は出ていないのが現状だ。
ふと気になった。うちの妻はピースサインをするのだろうか。
もともとカラオケにもいけないくらい照れ屋だし、昔撮った写真やプリクラでもピースサインを見た記憶がない。だいたいおなかの前で手を組んで、軽いストレートネックに、口をつぐんで微笑みを浮かべるだけだ。
帰宅してひと段落したタイミングで聞いてみる。
君はピースサインをするのかいと。
妻はきょとんとする。
僕はかまわずカメラを構える。
はい、チー
ズ。
めっちゃするやん…。