眠眠カフェイン

横になって読みたい寝言

眠眠カフェイン

近所のパン屋と目が合わない


目白あたりのパン屋によく行く。お気に入りの店があるというわけではなく、単純に生活圏がその辺だからだ。

オフィス街と違って客であふれかえっているわけでもなく、せいぜい客は2~3人程度。塩味か甘味か。トングのリズムに合わせて、各人が”いま現在”の自分の食嗜好と向かい合う。熟考して決めた数個のパンはおのずとと思い入れも深くなる。

 

しかし、パン屋の店員はまるで石でも扱うかのような手つきでそれらをひったくり、目も合わせずに会計をはじめる。

フクロオツケシマスカ。
サンエンカカリマスガヨロシイデスカ。

言葉は半角カナに変換され無機質にはじき出される。ご時世のあおりを受けて、釣銭はトレイの上にのせて差し出される。ふと外貨両替でもしたんだっけな?という気分になる。

 

そんな時、僕は決まってこう言いたくなる。

「キミ、パン屋だよね?」と。

できるなら両肩をしっかとつかんで聞いてみたい。上司がよくいう「怒っているわけじゃないんだよ、ただ言わせてもらうとね」の最たるもので、気分を害されたというより、相手の行動に何の意図も見いだせないからだ。

 

何事にもTPOというものがあり、接客もしかり。旅館はわざわざ足を運んでくれた旅客に全力のねぎらいを掛け、葬儀屋は遺族に厳粛な優しさを用意する。

パン屋はどうだ。コスパがいいわけでもなく、長持ちするわけでもなく、健康に良いわけでもない食べ物を買いに来る客は、”実用性以外の何か”を求めてきているのだ。

ゆったりとした音楽に、焼き立てのいい匂い。パンの表面には色生地やチョコチップで動物を描いて、「Happyな触感♡3時のおやつにいかがですか?」なんてポップを添えておきながら、接客は無表情。いやサイコパスかと。切り替えが良すぎてもはや怖さすら感じるほどだ。

 

もちろん、店主とバイトスタッフの想いがまるで2色パンのように乖離しているのかもしれない。だとしてもこのポイントはちゃんと教育しないとダメだ。コンビニとは違って、何か作業してる時にレジを頼まれても「はぁ、」なんて顔に出せば台無しになってしまう空間なのだ。

何も満面の笑みを浮かべろとは言わない。
でも、1度もこっちを見ないのは違うだろう。

 

最近はパン屋に限らず、いろんなお店で人と目が合わなくなっている。商品や食券を受け取ると、まさに処理というたたずまいで職務をこなす。そのくせポイントカードだアプリだと一方的な押しつけごとは増えるから、「店が早口でまくし立てる要望に客が食い気味で返す」といったやり取りが増えている。

 

書店は昔から塩接客をする印象があったが、百貨店に入っているお店などはもうとんでもないことになってきた。

「コチラカバーオカケシマスカ(いいえ)フクロオツケシマスカ(いいえ)ソレデハオソレイリマスガホンニレシーヲトハサマセテイタダキマス(はい)カードハオモチデスカ(いいえ)スグニポイントヲオツケデキマスガオツクリニナリマスカ(いいえ)チュウシャケンヤアプリハオツカイニナリマスカ(いいえ)カシコマリマシタアリガトウゴザイマスマタオコシクダサイマセ(どうも)」

※()内は私のセリフ

まあ書店員に関しては職人気質というか…見るからに会話が得意じゃなさそうな人が多かったから、そこまで気にしたことがなかった。しかし、これだけ文字数がかさんでくると、たどたどしさがすごい。もはや、こちらが店員の詠唱を待っている状態だ。

 

僕は何も時間がかかるのが嫌なわけではない。
つい最近に話題になった「注文に時間がかかるカフェ」にもの申す、とかそういうことではないのだ。しっかりとコンセプトがあり、人と人と向かう故に時間がかかるなら、素晴らしい試みだと思う。

ようは取り扱う商品と、お店に合った対応をしてほしいということ。AIがフィットするサービスはどんどん導入したほうが世の中のためだ。

 

しかし、パン屋やあるいはケーキ屋はどうだろう。
普段使いの食パンとかならまだしも、モンブランをわしづかみにしてセルフレジでピッとやる未来をみんな求めているのだろうか。

「えっと、ムース・ア・ラ・ピスタシュと…タルトレット・フリュイ・セゾン」
なんてこっちだって言いたいわけではないのだ。ハイムーストタルトデスネー、なんて冷たく返すくらいなら、最初から「1番」とか「4番」とか書いておいてくれ。タバコみたいに。

「今日までの限定なんです」とか。「何の果物がお好きですか、でしたら!」とか。そういう余白がいいんだろうに。

 

逆に、よく行く場所で「目を合わせてくる接客」をされるケースを考えてみる。
<スタバ><役所><それなりの単価の店><超個人店>、ほか<外国人スタッフ全般>あたりか。自分がそのブランドに誇りを持っているか、しっかり教育されているか、接客が売上を左右すると痛感するか、などがなければほとんどがおざなりの対応になってしまうのだろう。

今後は無人化するお店も増えると言われているが、人がやるにしろ機械がやるにしろ、客の細かな動きを観察できない店に未来はない。人がやるなら、もう少しペッパー君を見習ってチラッとこっちを見てほしいものだ。

どうせだから、「レジ打ってるあいだ両目に10円玉はめてても店員気づかない説」でも検証してやろうかしら。