眠眠カフェイン

横になって読みたい寝言

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煽り運転を1,000回されてきた人生でした

30あると言われる私の趣味の中には、「ドラレコ動画を見る」というものがある。
ドゥンドゥク鳴り響く音楽と夜の高速道路。
久石譲と見知らぬ海沿いの道。
早回しも等速もPV調も、それぞれに良さがあって好きだ。

 

中でも路上トラブル、海外でいうところのロードレイジ系もそれはそれで味があるジャンルのひとつ。
中でも臨場感マックスなのが「煽り運転」だ。
平等な環境下で我先にと前へ行く。
生粋の一人っ子であり、陸上部出身でもない僕には1ミリもない発想で、これをする人が不思議で仕方ない。

ということで煽り運転はしたことがない。
逆に、煽られた回数はゆうに1000回を超えている。

 

これは東京に生まれ、首都高を走る以上避けられない運命のようなものだ。
僕だって空気を読んでアクセルを踏み、法の定めをスリップストリームしてきたのに、それでも右側車線を走れば、この尻を狙う輩は後をたたず。暴れ狂ったカナブンみたいなテッカテカの車体を、マタドールが如く避け続けてきた。

繰り返しになるけど僕は一人っ子だから、道を譲るのはまったく気にならない。せいぜい朝の通勤ラッシュ時に後ろからかかとをコンとやられたくらいの違和感でしかないのだ。お気に入りの靴が汚れるのが嫌だから横に避けよー、ってな感覚で、速やかに車線変更を行ってきた。そのたび、”煽る”ことの謎を感じる。

人は、特に男は、なぜ前の車とフライパンをむやみに煽るのだろうか。

 

煽り運転はきっと昔からあったし、技術の進歩(ドラレコ×SNS)によって激しく可視化された典型的な例なのだろう。
悪用すれば簡単に人を殺せるのを分かっていて、それでもなお鉄の塊をぶつけてくる。ドライバーは、いわば通り魔のような精神性を含んでいるのだ。こんな気持ちはどこまで生まれてくるのだろう。

 

要するにプライドなのかな、と思っていた。
いかなる場合も後塵を拝すれば負けなんだと。
横に女性や乗せれば男はイキるし、そういうのを好きな女も事実としている。
ハヤイ、オレ、コワクナイ、ナワバリ、マモル。アナタ、ツヨイ、ワタシ、スキ。
そんなチンパンディッシュな精神の持ち主だけが、ドン・キホーテの買い物帰りに煽り運転をするんだと。

けれど、どうやら違うケースもあるようだ。
ドラレコではヒョロヒョロ眼鏡の兄ちゃんが平気で煽るケースも散見される。

交通の流れを早くしなくては、という政治犯みたいな啓蒙の動機。
せっかく買った愛車のスペックをふんだんに試したいから。
友達とつるんで、純粋にゲーム感覚で。
どれもよく分からないけど……ドラレコ動画を見る限り、風変わりな動機が世の中に転がっているのは確かなようだ。

単純に距離感が掴めていない人もいる。
スーパーでレジに並んでいると、髪に水分油分ゼロの不審なババアがいまにもバックハグしそうなくらいぴったりと背中についている時があるが、ああいう人種。
「あーそうだカマンベール6Pも買おうっと!」と激しく僕が身を翻したら死ぬのは自分なのに、自分側のリスクは全く考えないのだ。

 

あと中年男性に多いのは、一歩でも先に出ているのが”得”と考えるタイプ。そういう人は、自分が歩行者の時に信号待ちで絶対3、4歩道路に飛び出して待つ。自分がドライバーの立場なら、そいつに「危ねえな!」というにもかかわらず。

ベビーブームの兄弟お菓子争奪戦の代償か、小狡さをよしとする日本ビジネス界の賜物か。いずれにしても、「自分の得は周りの迷惑」という思考を持てない人にかける言葉はない。煽られてきたから煽る、なんて、ただの虫じゃん。

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色々語ったけど要するに煽るなんてバカってこと。
「人の車の後ろにいるのは負け」というのは、「おっぱいやティンコは大きければ大きいほどいい」に通じる、味もへったくれもない発想である。

譲れないこだわりはカッコイイが、なんでも譲らないのをこだわりにするのはカッコワルイ。むやみの煽らない、心の火加減調整が気持ちに熱を通すのである。