眠眠カフェイン

横になって読みたい寝言

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誰も言わない「顔」のはなし

ルッキズムなんて言葉が頻繁に登場して、顔の良し悪しを語っちゃいけないみたいな風潮のある昨今。
僕は、もっとふれていいと思うんです。

今日は温度高めでいかせてください。

 

 

 

あえて話題にするからこそつく自信もある

僕が自分の顔について初めて意識したのは、中学時代のある体験がきっかけでした。
男子校なのに、「細く切ったセロテープをまぶたに貼って一重を二重にする」っていう女子みたいな遊びがなぜか流行ったんです。まあ周りも見栄えを気にし始めるころだったんでしょうね。
もちろん、化粧みたいにずっと貼って過ごすわけじゃなくて、一瞬やって「その顔おもしれー!」で終わりなんですけど。
僕もちょうど一重まぶたなので、面白そうだと思って乗ってみました。

 

すると、予想外のことが起こりました。
隣に座っていたコバシくんという同級生が、僕の方をガッ!と掴んで
「ダメだよ!ネムヒコ君は絶対一重のほうがいいんだから!」
と主張してきたんです。

コバシくんはイギリス系のクォーターかなんかで、めちゃくちゃ整った顔の子でした。目なんて超絶パッチリ二重。だからなのか、オリエンタル中学生の軽率な行動が気になったみたいです。

僕は特に一重がコンプレックスだからやった訳ではなかったので、「お、おう…」という反応でうなずくばかり。でも、どんな形であれ褒められたのは嬉しかったんです。
それ以降も、一重についてネガティブな感情になったことは一度もありません。

 

雑誌が語る弱点は、リアルの弱点ではない

雑誌では目は小さいより大きい方、大顔より小顔がもてはやされるもの。人間、口ではいくら「ルッキズムはダメだ」と言っても、商売になると正直です。

じゃあ一重は弱点なのか?
タレントになりたいならともかく、リアルにおける審美眼上は全然そんなことないんですよ。

たとえば僕なら、顔のサイズ・鼻・口・耳…と、自分でいうのもなんだけどほとんどが平均的な範囲。仮に一重が弱点だとしても、最も特徴的なパーツであることは間違いありません。僕を好きになってくれる女性が話題にするのは、ほとんどが「目」です。個性があるっていうのは、それくらい大事ってこと。

 

 

個性は”センサー”の働きもする

リアルにもタレントみたいな美しさを求める人は当然います。
栗山千明が出た時には「エラが…」、多部未華子には「目が…」、綾瀬はるかには「アゴが…」とか難癖をつけるタイプ。近い知り合いにも何人かいます。僕からしたらそれこそが最大の魅力で、むしろ無くしちゃたらその人じゃない!ともったいなく感じちゃうんですけど。

造形の完成度を求める人、個性を求める人。
世の中にはこの2種類がいて、後者も決して少なくはないはずなんですよ。

 

もしかしたら、僕も二重ならもっとわかりやすくモテたのかもしれない。
ただそうなると、今度は”センサー”がなくなってしまう気がするんです。

一重って結構好みが分かれるので、接していて
「この人は僕を恋愛対象として見てくれているんだな」
というのが分かりやすいところがあるんですよ。

めちゃくちゃ綺麗な目ならともかく、「ただ二重なだけ」みたいな平均的二重にされるくらいなら、僕は生まれ変わってもいまの一重がいいです。
顔整ってるねー、とかよく言われるわりにモテない人がたまにいるけど、あれはあれで方向性見失いそう。中途半端に来られるのって結構面倒なものですし、だったらくっきり態度が分かれた方が楽です。

 

個性派ルックスはコスパ最強

その点、うちの妻のルックスはわりと特徴的です。
一個一個見ると飛びぬけて変ってことはないけど、すべて合わさると唯一無二の顔立ちをしている。

正直、真顔の証明写真なんかを見ると「一般的に見てかわいい…のか?」と感じる瞬間もあるんですけど、動くと絶妙に愛嬌がある。僕は飽きないどころか、年を重ねるごとにクセになっています。これも個性好き派の良さですね。あんまり”劣化”とかそういう概念がないというか。

あと生臭いことをいうと、誰が見てもかわいいって人はチヤホヤされますから、競合が現れやすくなりますよね。誰もが好きで行列ができるお店の味か、クセはあるけど親しみがあって俺は特に好き!な味かという。
…なんだか妻を納豆みたいに語っていつか殴られそうですけど、自分好みの個性派ルックスは見つかれば最強です。完成度求める派は、「ほら見て横にいる恋人きれいだろ!」という醍醐味もあるんでしょうけど。

 

 

「ルックス診断士」の提案

とはいえ、個性にも限度があります。あまりに顔が大きかったり。エラが信じられない角度に張っていたり。ラインを超えて特徴的だと、こと恋愛市場においては逆にニーズが少なくなってしまうでしょう。

そこでルックス診断士ですよ。
結婚相談所は生活背景や年収など総合的に判断せざるを得ないし、美容外科は整形したいと言われたら断れないでしょうから、あくまで見た目について客観的にコンサルできる存在が必要です。

・正直、このパーツは恋愛対象からの受けが悪そう
・あなたが気にしているそのパーツは好きな人もたくさんいるから伸ばすべき
・顔はいいけど太りすぎor痩せすぎ
といったところをちゃんと向き合ってあげる。
あえて恋愛対象となる性別の人が相談に乗るのも全然アリでしょう。どっちみち整形するとしても、ニーズをしっかり顕在化しておいた方がいい。


もちろん客観的なデータは相当要る。AIもガンガン使うべきです。
そして、それ以上に”伝え方”が重要です。

一部の結婚相談所やマナー講師みたいに、客観視をふりかざして上からアドバイスするようではいけない。しっかり伝えるからこそ、ありとあらゆる手を尽くして寄り添うことが必要です。
生まれ持ったものが絶対的に悪いんじゃないこと。あくまで恋愛市場上での優劣傾向があること。尊厳を傷つけないよう、子供向け大型遊具ばりにクッション言葉を敷きつめてほしい。願わくば国家資格。危険物取扱者試験の何倍も難易度を上げて、心の安全を担保してほしいです。

 

***

「ありのままのあなたを好きな人もいる」
「顔は好みだから、良し悪しを語るべきじゃない」
そんな風にルッキズムの盾で蓋をするやり方だけでは救われない人がいると思うんです。
場合によっては「確かにそのパーツは気になる人もいるかもね」とはっきり言われた方が、心休まる人もきっといるはず。

キレイゴトばかりの言葉のルッキズムを追い求めるだけの世の中は、もっと整形していくべきなんかじゃないでしょうか。
正直に、誠実に、情熱的に。

いまこそ世界にはコバシ君が必要だ。