眠眠カフェイン

横になって読みたい寝言

眠眠カフェイン

クリスマス空振り事件

『DTテレビ』(AbemaTV)が終わり、3年が経ちました。
かつて毎週金曜に夜な夜な開催されていた、DT(童貞)教育バラエティです。

男性がどうやって女性を誘うかに正解はなくても、1度もうまくいかない人には共通の不正解があるはず。そんなことを教えてくれる有意義なコンテンツでした。

終わったのはチュートリアル徳井さんの税金問題が主因でしょう。もしかしたら100回を区切りにしたのかもしれませんが、新しいDTが参加したばかりだったので軌道修正の感は否めません。

 

いまでもちょっとだけロスがあります。僕は決してDTを下に見ることなく、同士の気持ちで見守ってきましたから。何度も言うけどこちとら男子校を6年やっていますのでね。名もなき若手芸人の可愛さ、グラビアアイドルの生々しさ。甘酸っぱいデート企画。まさにかつて自分が夢見た妄想が具現化されていました。

※手を繋げないヒロム(お団子まんじゅう)、小悪魔に振り回されるひろ(マンマーレ)、実は彼女がいたたかくわ(タイムボム)、ギャルとナンパに覚醒するぼうず(元バカ丸海賊団)、同棲の喜びを噛みしめるひらおか。もちろん月オナ編集長クロサワも。どの回も鮮明に覚えています。

 

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そして、明日はクリスマス。
個人的にはこの日を収まりよく過ごした記憶がありません。つき合いたてで背伸びしたお店に行けば、周りが気になって大きな綿に全身を包まれたような手持ちぶさたに襲われる。かといってガッツリつき合ってからでは、「いきなり特別な日って言われてもな…」と現実的な考えが勝ってしまう。
相手が一緒に過ごすのに安心してくれたり、プレゼントを喜んでくれればもちろん嬉しいけれど、個人的な満足感を見出すのはけっこう難しいです。

よくも悪くも、1ヵ月助走つけるのが長すぎるんですよね。山下達郎竹内まりやのセットを100個くらい食べるとお腹いっぱい。当日はわりと蔑ろになっちゃう。

どちらかというと、恋愛関係がうまくいっていない時の方が、煌びやかな記憶が残っています。たとえばそう、あれは横浜時代――

 

相手は会社の同僚です。
クリスマスイブイブくらいだったかな。お互いなんか寂しいよねー、とかなんとかほざきながらみなとみらいへ行きました。海の見えるレストランで飯を食い(立地的にデニーズでも見えるけど)、中華街でお面を被り、赤レンガ倉庫で願いの叶うベル的なやつを鳴らした後、カラオケで大いに歌い、軽く飲みながらビリヤードをして1時過ぎ。

ものすごいテンプレ的ですが、これはあんまりデートを意識してなかったからこそ。「どうせ世間の恋人はこういうのするんだろう?」というアンチテーゼでした。

が、そこからです。
先に店を出た僕がその辺の柱にもたれかかり、「何か飲めるとこいくかー」とかいいながら携帯をいじってたら、
「なに見てるの?」
とその子が懐に入ってきたのです。僕と、携帯をいじる両手の3角形の中にですよ!もちろん身体はぴったりと密着します。

 

瞬間、僕はホテルにその子を誘っていました
条件反射とは恐ろしいもので、まるでモグラたたきのようなスピードで反応してしまったのです。別にムラムラしていたわけじゃないんだけど、寂しい寂しい言ってるし、あと腐れのない距離感だったし。ないよりサインを見逃すのは失礼じゃないですか。ほら、僕中学時代野球やってたから。

 

冬空を走る男のスイング。

刹那、虚しく鳴り響く風音。

「えー、そういうのじゃないんだけど」


ブオオオオオオオォン!!!
それは人生で初めての完璧な空振りでした。横浜では大魔神佐々木主浩のフォーク以来の消える魔球。
近くに審判がいたら、
「いまどうなった!?」と問いただしたい気分でした。

わからん…ワシはわからん!
なぜ体を密着させる。ほろ酔いの、横浜の、ナイトの、クリスマスの、ホテル街のすぐ近くで!

 

結局、「だ、だよなー」とちびまる子ちゃんの山田くらいアホになって気まずさをごまかし、マンガ喫茶で夜を過ごしました。

始発電車を待つ電車のホームの虚しさはそれはそれはメジャー級。クリスマス色の駅の装飾に心が揺れて、いつもと変わらない平坦なアナウンスが流れていて。その風の冷たさはまさにDT時代のそれでした。もうホテル行かない?なんて言わないかも絶対。

 

今でこそ良い思い出とギリギリ言えますが、しばらくはかなりのトラウマでした。
あれ以来、僕は慎重に慎重を期して、確実なボールをコンパクトにスイングする恋愛感を身に着けたのです。

 

 

 

『DTテレビ』はそんな風に縮こまっていた僕にとって、勇気の大切さを思い出させてくれた番組でした。女の子は思わせぶりな変化球を投げるし、仲間と結託してトリックプレーを仕掛けてくることもあります。くるりの『男の子と女の子』が歌うように、何を考えているのかは何歳になってもわからない。

だからこそ男性は、バカバカしい妄想とキラキラした夢を失くしてはいけないんです。
ジェンダーに配慮すると長くなるから、従来の概念でいう男に限ってキッパリ言い切ってますけれども。あと根拠も特にないですけれども。
DTには可愛さしかないんですから、それくらいでいいんです。

 

いまはDTの人も、好きな人ができたときは壊れるまでフルスイングしてみてください。人によっては全然当たらねえと思います。バットに振られることも、「どこ振ってんだ!」と怒られることもあるかもしれない。
でも、ホームランはたまたまじゃ入りません。
DoとTryを両腕に、しっかり振り回していきましょう。