眠眠カフェイン

横になって読みたい寝言

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醤油のように薫りたい


大学時代はよくラーメン屋めぐりをしました。
東にもちもちの麺があると聞けば聞いたこともない路線に乗り、はるか南に新機軸の店が開くと聞けば車を走らせ。長い行列はたくさんの本を読みつぶして、美味しい麺をすすり続けたのです。

少なくとも200~300店は回ったんじゃないでしょうか。おかげさまでだいぶ東京の土地勘がつき、東京出身の方の地元トークにはなんとなくついていけるようになりました。

 

途中で気づいたのは、自分が醤油派だってこと。味噌はだいたい60点を超えてくるし、
豚骨も、くさいのはまだしも、まずいのにはそうそうお目にかからない。

その点、醤油は地雷があるんですよ。
「おじさん、間違えてお湯出してるよ!」と言いたくなるほど薄いやつとか。「これは…出前一丁!」って既食感ただようやつとか。もともと繊細な味わいなので、ゴムみたいなハズレ麺のときにストレートに響くのも嫌ですね。

でも、この繊細さがいいんです。

 

イメージとしては、

・醤油…20~100点
・塩…40~80

・豚骨…65~75点
・味噌…60~85点

という感じ。

伝わらないのを承知でいうと、僕が当たりだと思ったお店の醤油や塩は「引き算」のおいしさで、豚骨や味噌は「足し算」のおいしさだった。
もうちょっと違う言い方だと、醤油や塩が「涼し気な目元を欠点にしないために顔全体のバランスを取る」メイクで、味噌や醤油が「魅力的なぱっちり二重があるのでとにかくそこを活かす」メイクというか。

もちろん塩も好きなんですが、特に醤油は見た目のシンプルさに反して驚くほど味わい深いお店が多かった。その懐の広さと、当たり外れの大きいギャンブル感に惹かれて、果てしない味の探求がはじまったのです。

 

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「カモン、ソイソース‥‥」

 

世の中に数多ある二択では、決まって繊細な方を選んできました。

醤油と味噌なら醤油。
片手剣と両手剣なら片手剣。
ギターのシングルコイルとハムバッカーならシングルコイル。

「誰がやっても安定しやすい」とか「攻防に優れている」といったキャッチコピーはあんまり僕には響かない。一歩間違えたらどうなるか分からない分、いい時は格別に美しい。そんな性質に惹かれます。犬と猫はどっちも違う意味で「どうなるか分からない」ので選べないんですけど。

 

こんな嗜好をしているせいか、若い時は周りの大人たちから煙たがられました。
君はすごく分かりづらい子だね、と。

そりゃそうです。だって、どうなるか分かりづらいものが好きなんですから。そういう意味では、自分ではすごく分かりやすいんですけどね。

 

世の中嫌なことはたくさんありますが、僕はひたすら耐えて身につけた強靭なメンタルや、つくりものの気の強さを欲しくはありません。そんな風にするなら一言一言の鋭さを磨きたい。

しなやかにシュッと切り抜けて、忘れたころに効いてくる。
ふわっと薫る醤油の後味のような存在感を身につけたいのです。

 

 


最後に。
せっかくなので、おすすめの醤油ラーメン3店を挙げておきます。
いずれも最後に行ってから期間は空いているので、豹変していたらすみません。


東急池上線荏原中延(えばらなかのぶ)駅にあります。
無駄がなく、走・攻・守すべて90点以上のパーフェクトラーメン。野球選手で言うとイチロー

ちなみに東急池上線に乗ったのは、この店に行ったのが初。その後戸越銀座在住の人と仕事する機会があったりして、良い話のタネになりました。

 

こちらも人気店ですね。『多賀野』さんに比べるともうちょっとふんわり癒し系で、もちもちした麺の印象が強いです。たまーに水っぽかったりぶっきらぼうな時もあったけど、そんな気まぐれも許しちゃう美味しさ。野球選手で言うと落合博満

「おすすめのラーメン屋は?」「ああ、道頓堀の…」と不用意に説明すると、ボケたと思われるので注意。

最後は地元から。刻み玉ねぎがのっている「八王子ラーメン」のお店です。
よくスポーツジムの帰りに行きましたが、幸せって近くにあるなって思ってました。野球選手で言うと元巨人の川相昌弘ですね。これは単純に店長が似てるっだけです。

ガード下にある民家然としたお店でインパクト大。敷居はまったく高くないので、八王子にお越しの際はぜひ飛び込んでみてください。

 

***

ということで醤油回でした。
そんな僕は、醤油顔、塩顔、砂糖顔…みたいな話になればもちろん醤油顔と言われます。ただ薄いor濃いだと濃いと言われることもあるので、たぶんたまり醤油くらいなんじゃないでしょうか。
扱いが難くて申し訳ありませんが、今後ともよろしくお願いいたします。