眠眠カフェイン

横になって読みたい寝言

眠眠カフェイン

肺気胸、入院、医療ミス。

新しい会社に入るドタバタで、しれっと連続投稿日数がストップしてしまいました。
失敗や痛みは人生につきもの。
また、気持ちも新たにやっていく所存です。

ということで、今日は”痛み”についてのお話。
僕自身が選ぶお気に入り投稿「やつあたり骨折、痛杉内俊哉 」に続く小怪我シリーズ第2弾です。病名はズバリ気胸通称「イケメン病」と呼ばれ、やせ形の男性に多く起こる病気にかかったのです。

 

 

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症状発生(優しく頑固な母)

僕がまだ大学生だったある日の夜。実家のリビングでイチローマリナーズ時代)のニュース映像を見ていた時にそれは起こりました。突然、後ろからクマに乗っかられたような感覚。呼吸が苦しくなり、どんどん前傾姿勢になっていきます。

気胸は肺に穴が開く病気ですから、肺がある側(体の前側)が痛いというイメージを持たれるかもしれません。もちろんそういう部分もあるのですが、僕の場合はむしろ背中の方が痛くなったのです。あとから聞いたところによると、体内に漏れ出した空気の圧迫感でそうなったらしいのですが、発症時点では自分でもどこが痛みの発信地かさっぱり分からなかったほどでした。

 

あわてて台所に立つ母に報告すると、
「よっしゃ、任せときな!車で病院まで送ってってやるから!」
と威勢のよい返事。それから、入念にメイクをはじめました。

かれこれ10分、カーペットの上をゴロゴロともだえる僕。夜中に病院まで運転するのに誰が化粧気にすんねん…という本音が喉から出かかります。


母はそんな息子の気持ちも知らず、しこたま安全運転を続けました。目的地の病院は八王子の山にそびえたっているのですが、なにせ中途半端な都会のため、道中には鹿と猪しか見ていないような小信号が無数にありました。母は律儀にもそのすべてに停車しては、「待ってろよ、息子もうすぐだ!」という顔でぎゅっとハンドルを握ります。積極的に法律を犯せとはいいませんが、もう少し頭を柔軟にしてほしいと思わずにはいられませんでした。

 

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応急処置~ナゾの機械を装着

病院につくとまっすぐ緊急外来へ。そこでようやく、僕は今回の症状が気胸だと知らされることになります。そんな病気まったく聞いたことがなかったので、肺に穴が開く病気と聞かされて「終わった」とつぶやいた記憶があります。

さっそく応急処置をするわけですが、これが思いのほかざっくばらんでした。くしゃみしたらバラバラになりそうな長机の上で、TKBのやや上あたりに赤チンみたいのを塗ったと思ったら、いきなり胸を切り開いてチューブを入れてきたのです。「ダメ、まだ心の準備が…」という間すらありませんでした。

これが、なんだか知らないけど異常に痛い。担当医師は「またまたー」みたいな顔してグイグイ押し込んできましたが、こっちが正しかったと知るのはずっと後の話――。

 

なんとか処置が終了。即入院が決まり、薄暗くてだだっ広い病室のベッドでひとり、気持ち整理タイムです。

僕の胸から飛び出したチューブの先は、水がたまった謎の装置につながっていて、僕が呼吸をするたびにかすかに音を立てます。難しい理屈は分かりませんが、肺腔内の空気量調整をしてるとのこと。音がなくなったら正常に近づいたサインだそうです。

装置にはキャスターがついているので、ガラガラ音立てて移動できます。(処置当日はそんなに動きませんでしたが)これドリフのコントとかでよく見たなあ、と少しだけファニーな気持ちになりました。

 

いろいろ地獄の入院生活

みなさん風邪などで経験があるように、呼吸器系が調子悪いというのはそれだけですごくストレスです。呼吸、せき、くしゃみが妙に可視化されるだけでも嫌になるし。身体を動かすとチューブが皮膚にこすれて痛い。自ずとできるだけじっとするようになりました。

家族に持ってきてもらった本やクロスワードパズルの雑誌はすぐに終わってしまうので、最後は英字新聞に手を出しました。訳しながらならどうやっても時間がかかる。新種のクジラが見つかったとかで、そりゃよかったねとほほ笑んだのを覚えています。


また、他にも困った出来事がありました。僕は6人部屋に入れられていて、基本的に誰とも話すことなく過ごしていたのですが、当時の彼女(ギャル)が数日おきに元気よく駆け込んでくるのです。
ザ・文化系みたいな色白ガリガリ男のもとに、「ダーリーン!」と派手目な女性が飛び込んでくるさまを想像してごらんなさい。部屋のメンバーもお互い気まずいことこの上ないでしょう。僕にりゅうちぇるの度量があったらよかったんですが。


そんな時、僕はナゾの装置と一緒に散歩しました。ものすごく不健康なお遍路というか、近未来型ペットを連れているというか。風呂(濡れタオルで体を拭くだけ)も、トイレも、2人は一緒。なんとも得難い体験となりました。

ちなみに看護士さんとのコミュニケーションもほとんどなし。普段あんなにエロい妄想をしているのに、実際に身体が悪いとそれどころじゃないから不思議です。

 

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ポンコツ医療ミス発覚

入院から約10日。普通なら退院してもいいくらいの日数ですが、ナゾの装置から出る泡の量にはいっこうに変化の兆しが表れませんでした。というか、もともとすごく弱弱しかった。入院時に「ボコボコ出る」と聞かされていたのに、最初からずっとポコポコというか、プチプチというか。

さすがに変だと思った僕は、回診に来た担当医に思い切って問いをぶつけてみることにしました。

すると、担当医はちょっとした変顔とともに
「あっこれ!もしかしたらチューブ差し込むとこ間違えてるかも!」
とタメ語で軽く返してきたのです。どうやらチューブは肺じゃなく、肺と骨の間に刺さっていたようなのです。そらろくに音も鳴らんはずだわ。

さ、差し込むところを間違えただあ!?
プロが犯した童貞みたいなミスに僕の家族はブチギレ。交渉の結果、残りの期間は費用据え置きで優雅な個室生活となりました。これにはギャルも大喜び。部屋中を自由に駆け回っておりました。
呼吸するたびボッコボコ泡立つ。くしゃみするとボコーン!って間欠泉みたいのが出るし、なんだかすごく生きてる実感がありました。

そして退院へ

そこからは1週間足らずで退院となりました。正直、病院への不信感はだいぶありましたが、肺からチューブを抜く時は和みましたね。
入れた時同様、軽く消毒液的なものを塗ったら、

「よし抜いたぞ!ふさげふさげふさげ!」
みたいな感じでいい大人があわてて縫うんですよ、冗談みたいな話だけど、すごく人間くさくて和みました。


にんげんだもの、ミスはあるさ
ききゅうとききょう
おなじくうきがつまっているのに
いちもじちがえばおおちがい
ことばはおもしろいんだよなあ

と、当時流行りの詩人よろしく別れの歌をそらんじてしまいました。


退院した日のことは鮮明に覚えています。
帰り道は八王子ラーメンの名店「えびす丸」でチャーシューメンを食べ、井上和香がグラビアを飾る青年誌を買いました。とにかく肉肉しいものに飢えていたのです。

そしてなんといっても、食後の一服が最高に美味しかった。
ほんの数分前、「禁煙しないと再発のリスクが禁煙時の30倍だよ」と言われたというのに。

とにかく我慢というものを知らない20代前半でした。

結論

・体質 →やせ形の男がなりやすい
・痛み →痛い、というか苦しい
・入院 →ストレスがあって暇
・医者 →たまにミスる
・再発 →一度やると再発の可能性大、喫煙を続けると30倍ボーナス
・別名 →イケメン病

ぜひ別名だけでも覚えていただけたら。
では、いつか続編記事「帰ってきたイケメン病 」でお会いしましょう。