文学作品みたいなタイトルになってしまったけれど、男のくだらない妄想を描くだけです。露骨な表現を含まないものの微エロのテーマなので、その辺アレルギーある方はご注意ください。
世の女性各位におかれましては男が女子の「ロングヘアをボブにする」みたいな話を聞いてびっくりするみたいに、「な、何その技術!?」と引いていただけたら幸いです。
***
かつて僕は探偵に魅了されていました。
『探偵 神宮寺三郎』というゲームシリーズが好きで、探偵事務所の秘密基地感や、一部の隙も見逃さない観察眼に憧れたものです。
しかし、そんな淡い想いは日常生活のどこにも活かされることなく、予想外の営みに帰着します。
そう、セクシー動画の鑑賞という1点において。
まだネットの違法アップロードが法整備されていなかった時代。血気盛んだった10代~20代前半の私は、刺激的な動画との出会いを求めて日夜電波の海をさまよっていました。自ずと心血を注いだのが女優名の探索。男なら誰しも、途方に暮れた経験があるのではないでしょうか。そうでもないか。
この記事を見ているお嬢様のために説明すると、セクシー動画には大きく分けて<単体もの>と<企画もの>の2種類が存在します。
<単体もの>は女優の名前を前面に打ち出して、この子をよろしく!と謳うもの。
<企画もの>は出演者はあくまで素人という体でつくられたものです。単体でそこそこ有名な女優が企画物に出演することもありますが、あくまで別人格として扱われます。
たとえば黒田エリナという女優がいたとしても、企画物ではエリナ(24)となる。その構造はプロレスにおけるマスクマンに酷似しています。
女優名を隠すことには、メリットとデメリットがあります。
メリットは女優の新たな一面が見えること。一般的に単体ものはアイドル的に売り出されるためハードルが高く、中途半端なルックスだと「そんなに可愛くねーな」で埋もれがち。ところが、同じ女性でも素人として出会えば、「素人にしては可愛い」「生々しさがいい」「キャラがいい」と別角度で評価を選らえます。
別に覆面をかぶってるわけでもないのに、人間の審美眼とは不思議なものですね。
デメリットは次にまた出会える確率が格段に下がることです。だって、名前がクレジットされないんですから。
たまたま企画ものを見ていて、とんでもなくツボにはまる女性と出会ったとき。
男は恋する探偵と化すのです。
嗚呼知りたい。
もう一度姿を現してほしい。
すみません、せめてお名前だけでも――。
SNSもwikiもない時代、名もなき一片の動画から女優名を探すのはとんでもない苦労が伴いました。
そもそも単体ものに出たことのない”名前はまだない”状態の女優かもしれないし、もしかしたら本当に”女優”ですらなく、素人の”女性”かもしれないのです。それは大きなロマンなのですが、2度と会えない確率が飛躍的に高まるので切ないです。
さて、実務の話に移りましょう。
女優名の探索に向けた作戦は主に2つ。
A. 女性の特徴からダイレクトに探し出す
B. 作品名を特定し、間接的に探し出す
一見Aのほうが近道に見えますが、一個人の特徴などたかが知れています。イヤホンをぎゅっとに耳におしつけ、「アキちゃん」と呼ばれているのを聞き取ったとして、アキちゃんは数万人くらいいるし、偽名かもしれないし、アキナちゃんかもしれません。
実質的にはBのほうが特定しやすいのです。なんといっても、作品には人にはない”コンセプト”があるのですから。「ナンパ」×「女子大生」×「プレイ内容」などとあたりをつけたほうが圧倒的に効率的。作品名さえ分かれば、ネット上で同じ悩みをもった同士が「あの子は誰?」と騒いでいるケースも多く、女優の特定に近づけるのです。
作品名の検索はいろいろ方法がありますが、昔はいまほどネットに情報がなかったので、2chに生息する女優ソムリエが頼みの綱でした。さすがに直接「名前教えて」と書き込んだこと僕ははないものの、間接的には何度もお世話になった覚えがあります。
2chに貼りつけられたたった1枚のスクショから答えを導く千里眼は、まさに敏腕探偵のそれ。
「〇〇さんですね。■■さんの別名義でもいくつか出演されています」
「その作品以外は見ていないのでおそらく素人の方でしょうね」
あまりに冷静な口ぶり、説得力。誰もが自然と「師匠」「先生」呼びするその実力の前に、僕は「ああ、自分はそちら側の人間じゃないな」と痛感したものです。
おそらく彼らは知っていたのでしょう。
追い求めた女性に再び会えたとして、所詮は1度目の衝撃を超えるわけがない。会わない方が幸せなことの方が多いという人間の不条理を。
先生にも分からない難題と当たったときは、雨の中、深夜に車を飛ばし、立川のDVDショップでフィールドワークにいそしんだこともありました。レコードの名盤を探すみたいな真剣な顔をして、タンタンタンタンと指でケースをはじいていくのです。そのいじらしさと情熱は、今の僕が失ってしまったものかもしれません。
現在、ネットに違法アップロードされた動画を見るのはれっきとした犯罪になりました。自ずと作品名は分かるはずですし、昔と違って「企画もの専用wiki」「女性の身体的特徴から女優名を検索できるサイト」などもあるので、素人女性の特定はかなり手軽なものになっています。
(体感、女性の9割以上がちゃんと名前を持つ”女優”です)
まさに、人類みなエロ探偵の時代。
インフラが整った分、消費が早い世界になったものだと感じます。
便利の反対には空想や妄想があって、その助走が大きなエネルギーを生む。普通なら他の業界のように古き良きアナログ探偵は絶滅しゆくはずなのですが、なぜか各種レビューサイト(FANZAやAmazon)に先生方が生息し続けている不思議。
人間の業はかくも尽きないものかと思い知らされます。
とややこしい話になりましたが、力を入れて探せば探すほど、再会した時のガッカリ感が大きいのは真理です。一目ぼれは一目ぼれの瞬間がピーク。素人ものは素人だと信じ込んで鑑賞し、続編を追わない方が往々にして幸せですね。よっぽど魅力的なら、ほっといても単体女優としてデビューしますから。
…僕はせっかくの週末に誰に向けて何を言ってるんでしょうか。
しかし、昔の企画ものがどうやって女優を売ろうとしていたのかは不思議です。作品ごとに名前を変えられちゃ、売れるものも売れないと思うんですけど。
まあ、あくまでその作品だけが売れればよかったんでしょうね。よっぽどネットで騒がれれば、あの女優また使うか―くらいで。それだってSNSがなかったから相当アンテナっ感度は弱かったはず。
あの日2chにいた先生が業界関係者の方だったとしたら、叙述トリックにスパイス利きすぎってもんですが。
昔ほど捜索する機会も減った探偵くずれの僕ですが、AV新法の行方は陰ながら見守っています。ぜひ男性各位には(特に男子高出身の方には)健全で充実したエロライフが与えられんことを。