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生涯唯一のモテ期で生まれ変わったサルの話 ー前ー

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人生には3回モテ期があるという。
僕は過去それらしい時期が2回あるのだけれど、片方は幼稚園時代にじゃれていただけだから、実質1回だけということになる。

でも、たった1回が人生を変えるほど強烈だった。
あれは大学生活も後半に差し掛かったころ、立て続けに良い感じの女性が現れたのだ。

名づけるなら「喜怒哀楽の四女神」
その対照的な魅力に、僕はサル同然に翻弄されていくのだった。

 

女神には大変失礼ながら、ABCDと仮名で語らせてもらう。


まずは同い年のA。
大学の友達の予備校時代の知り合いで、いつのまに飲み会にいて、いつのまに仲良くなって。内巻きに癖のついた長い髪には明るいワンピースがよく似合った。

初めて話したとき、
直感で「こういう人と結婚したら幸せになれるんだろうな」と思った。
頑固で、決して人の悪口を言わない。なんというか、ちゃんと育てられた人だ。
初対面で僕は血迷って赤フレームの伊達メガネをかけていたのに、何もツッコむことなく接してくれた。

僕たちは順調に交際に発展した。
身分不相応な夢を語るのも、「タバコをやめる」と言って何度も失敗するのも、Aは不満ひとつ言わずに見守ってくれる。彼女と一緒に過ごすのは「楽(ラク)」だったけど、Aが賑やかな場所が苦手だったからデートはいつも公園や散歩ばかり。僕はまだ若かったし、正直あまり「楽」しいという感じではなかった。

僕は八王子で、彼女は下町。東京の左端と右端に住んでいた。



次に現れたのが1つ年下のB。
地元の友達がキャバクラ嬢とつき合っていて、その友達だった。肩までの金髪パーマ、スキニーのフリーターギャル。世の中を敵視するような鋭い目をしていて、僕と同じ銘柄のタバコを僕より速いペースで吸った。

Bの家が僕の実家から1~2キロほどのところにあると聞いて、一気に親近感を覚えた。彼女は僕が働いていたバーに飲みに来るようになり、僕は彼女の働くコンビニでコーヒーを買った。

あらゆる点でAとは真逆のタイプだ。人の悪口は遠慮せずに言うし、酒やタバコのない場所では遊ばない。服は白か黒か赤かピンクしか着ないし、ポッキーは夜ご飯だと言っていた。昔八王子にあった「カラオケ美術館」というナゾ施設がお気に入りで、暇さえあれば呼び出されたのを覚えている。(おかげさまで、僕は今でも浜崎あゆみBoAの曲ならだいたい合いの手を入れられる)

ずっと、心のどこかが欠けた風な子だった。僕のややこしい大卒ジョークにケラケラと笑ったふりをしたあと、まるで枯木の揺れる冬のような「哀」しい顔をする。
家に帰りたくないから遊んでくれ、と口癖のように言った。


そして、1つ年上のCさん。

彼女の場合は特殊で、知り合ったのは高校生のときにさかのぼる。
お互いに当時流行っていた個人ホームページをもっていて、そのつながりで交流するようになったのだった。僕は当時やっていたバンドについて発信していて、彼女は僕の歌詞が好きだといった。

高校生のころに初めて会った記憶は鮮烈だ。いわゆる小悪魔気質で、自分がどうしたらよく見えるかを理解しているタイプ。一挙手一投足があざとく、僕のことも最初から下の名前+君づけで呼んでいた。(そんなの親族にしか言われたことないのに!)
中高一貫男子校の閉鎖空間で過ごす僕にとってその魅力は抗いがたく、リアルにおける理想のタイプ像を決定づける原体験になった。

とはいえCさんにはずっと彼氏がいたし、関西の大学へ進学していたから、ガチ恋に発展することはなかった。

風向きが変わったのは、彼女がゼミ交流で僕の大学に来るようになってからだ。

見慣れたキャンパスに憧れの存在がいる非現実性ったらない。毛先だけ染めたナチュラルボブや、派手な古着のスカートはアイコンとして最適だ。いやでもこっちが先に見つける。僕を見かけると、彼女が嬉しそうに近づく。
そんな風景に、僕は綻び付きの「喜」びを感じるようになった。


同い年、年下、年上。
長女、末っ子、真ん中。
A型、O型、AB型。
まるで恋愛シミュレーションゲームのように三者三様だ。

誰を選ぶか、なんて偉そうな権利が僕にあったわけではないけれど、それぞれに何らかの形で求められているのは確かだった。

Aは彼として。
Bは遊び相手として。
Cさんは作品をつくるパートナーとして。(当時カメラとデザインにハマっていて、本を作りたいから文章を書いてくれと言っていた)

もし私たちがつき合ったなら。一緒にいたらジャブみたいなセリフがちらつく年頃だ。ストレートの当たる射程は分かっていた。

 

 

日、一日の行動が行く先を決める。
冗談抜きで、当時欲しかったものの第一位はセーブポイントで間違いない。



一人一人を物語にしてしまうととても書ききれない。
オリジナルソングだって、各10曲ずつくらい書けるだろう。
今回僕が伝えたいのはそれぞれの魅力ではなく、駆け抜けた先にある結末だ。
詳細は別の機会にして、端的に伝えようと思う。


結果、僕はAと別れ、Cさんとの連絡を絶った。


理由はBが慢性的に精神を病んでいたから。

彼女の家庭には問題があった。兄姉は医者と公務員で、否定され続ける自分に強烈なコンプレックスを持っていたようだった。ドロップアウトして、悪い男につかまって、完全に自分を失くしかけていた。

破天荒な性格は自分につまらない虫がつかないための防衛策。強がってはいるが、映画の激しいシーンや格闘技中継には目をそむけた。あれこれ干渉しない僕に、猫のように懐いただけなのかもしれない。

あとはやっぱり、距離が近いというのはやっぱり大きい。「会いたい」と言われるたび僕には情が生まれ、そこに愛らしいものがくっついて膨らんだ。ランニングコースを彼女の家沿いに設定して、窓に向けて手を振って通り過ぎる。たまにBが窓からネズミ柄の付箋を落とす。舞台は北ヴェローナでも夢の国でもなくただの八王子なんだけど、それだってすごくロマンチックだに思えた。

 

友達から、Aがすごく悲しんでいると聞かされて胸が痛くなった。当たり前だ。何も悪くないんだから。

一方ネットの知り合いからは、Cさんがブログにものすごい悪口を書いていると聞かされて頭が痛くなった。

誰よりも大きな声を呼んでくれるから。
僕はそんなサルみたいな理由で、将来や憧れよりも”今”をとり、Bと一緒にいることを選んだ。

男子校育ちにはとっくにキャパオーバーで、なぜ目覚めた時に裸のギャルがいるのか訳がわからなくなる。
ふと、リセットボタンを押したくなった。


でも神が遣わす試練はこれで終わりじゃない。
まさかの4人目が現れたのだった。

(後編)